世界的ベストセラーだという「スマホ脳」(アンデシュ・ハンセン著・新潮新書)は、私にとって最初から最後まで「やっぱりそうか~!!」の連続で、一気読みできてしまいました。精神医学者である著者の論証はとても分かりやすく、説得力がありました。
 曰く、スマホ(デジタルデバイス)を毎日長時間使い過ぎると、睡眠障害・鬱・記憶力や集中力の低下→当然学力の低下を招く。また、依存状態になると抜け出せない。(ここまでくると、アルコール依存どころか、薬物依存に近い?)とのこと…。
 電車に乗っていて、同じ車両の乗客で、スマホを覗いていないのは私1人だけ…という状況に気づいて、ぞっとしたことが何度もあります。大人でさえもこんな状況なのですから、まだ心身ともに柔らかく、影響を受けやすい子どもたちは言わずもがな…でしょう。
 ずっと、進学塾を続けてきて、最近加速度的に心配な状態の生徒が増えている気がして、自著でもその懸念を書いてきたのですが「将にこれだ」と思わずにいられません。
 また、IT産業のトップたちが、我が子にはデジタルデバイスの使用を厳しく制限して育てている…というくだりは「崩壊するアメリカの公教育」(鈴木大裕著・岩波書店・2016年)
でかなり詳しく紹介されていました。最も腹立たしかったのは、我が子には教育費の高い、アナログな教育を受けさせる一方、貧困層の子供たちには、極限まで教職員(人間)を削減して、生徒をパソコンの前に繋ぐだけの授業のチャータースクール(公設民営校)を推進して、お金儲けの対象にしている点でした。(写真を見たらぞっとします。)
 コロナの対策として、学校や予備校・大手進学塾でリモート授業が行われるようになった時、私は、真っ先にこれを連想しました。(「出た!!」という感じです。)
 大人が、リモートワークで済ませられる仕事をする場合と、子供の「学び」とは全く話しが違います。もちろん、無策のまま放置されるよりは、よほど良心的だとは思いますが、デジタルデバイスを介しての、対面の無い授業は、致し方ない場合のあくまで代替手段でしかない!と私は感じます。アテネでは、可能な限り対策を講じて、対面授業を死守しています。
 一斉休校になったことが、生徒たちの心身に及ぼしている影響は、宜しくない側面が多いのですが、今までそうではなかった子どもが、一時的スマホ依存に陥ってしまったケースが、一番顕著な例だと思います。精神的なコンディションが悪化し、もちろん成績は急降下していました。「一時的」なうちに、早く復帰してほしいです。
 テクノロジーの進化と、人間の生物的進化が大きく乖離してしまっている…という説明が繰り返され、とても納得しました。そして、デジタルデバイスを活用しつつ、悪影響を排する一番有効な方法が、軽い運動を継続すること…という点が、受験生の健康管理と似ています。コロナ禍に負けず、なんとか乗り越えていきたいですね。

神戸市灘区(六甲と六甲道の間)で、小学4年~高校3年の女子対象に個別指導を37年続けている
ATHENE(アテネ)の塾長 櫻井久仁子